「残す」ことを前提とした設計
2011.09 07

ここでの「残す」とは、継承というニュアンスを含んでいます。子育てをし、親の気持ちというものが分かり始めました。親は自分に何を残そうとしていたか、自分は何を残せるのか?自分の中で非常に大きなテーマとなりつつあります。残すことを前提に何かを始めるというケースは恐らく少ないと思います。

    私が住む青森県弘前市は城下町。歴史的な建造物にも恵まれ、いわゆる老舗と言われる古くからの素敵なお店もたくさんある。その中で、カクミ小路という有名な通りがあり、そこには太宰治が通ったという店など、風情のある通りだ。

    その通りにレストラン・ニューマツダという洋食屋さんがあった。丁寧な仕事とリーズナブルな価格設定、男性も女性も楽しめるメニューとボリュームで、知る人ぞ知る人気店であった。

    しかし、いつ頃からか不定休になりがちで、空振りすることもよくあった。それもまた、今度もまた来ようというスパイスにもなっていたのだけど。夫婦ともども、このお店のファンだったので、子どもが大きくなって最初に連れて行く洋食屋は絶対ここにしようと話題にしていたぐらいだったが、惜しまれつつ閉店となってしまった。シェフの体調が悪くなってしまったらしい。あまりに残念であった。

    古くからのお店は後継者という問題に悩まされる。誰もが知る有名店なら、修行したいと訪れるかもしれないが、地方で地元の人が楽しむ小さなお店となると、継続するための選択肢も少ない。子宝に恵まれ、親と同じ道を志し、親以上の味を持って受け継いでいく店もある。美談ではあるが、現実は厳しい。道半ばで店主が亡くなられ、奥様が必死の努力で店を繋いでいく例もある。しかし、中心となっていた人の代わりなど、いるはずもないのだ。

    その店ならではの基礎を身につけ、そこに新たな発想を上乗せすることで連綿と続く老舗を経営している例もある。生存競争に勝ち続けている証なのだろう。何が決定的に違うのだろうか。最初からできているとは考えにくいが、「残す」ことを前提に業務設計をやり直す時期を設けているのだと思う。生涯現役でいることは、職人としては素晴らしいことだと思う。しかし、時間という絶対基準がある以上、代替わりをしていく設計を描いておかなくてはいけないのだ。

    では、何を残すのか?資産、設備といった物理的なものではない。一子相伝とも言うべき技術か?技術とは何だろうか。技術を身につけた人間の思想なのだと私は思う。つまり、考え方だ。状況は刻一刻と変わる。時代も変わる。価値観も変わる。しかし、人間が人間を超えない限り、考えるという能力が唯一にして最大の武器なのだろう。

    私たちを取り巻く様々な物質は、考え方を具現化したものであり、生産者として生きるなら目を向けるべきは物質の裏側に流れる考え方だ。

    残し方を設計してみようと思う。正確には試行錯誤中だ。今はマインドマップをベースとした形で始めている。残す相手は娘。もしくはその先の家族。マインドマップの問題は1ノードあたりの情報量を少なくしたほうが良いこと。しかし、全体を常に見渡せること、ノード間の関連や派生が一目でわかる視覚表現は非常に素晴らしい。MindNode Proを使っていて、ノードに写真はファイルを指定できるので、1ノードあたりの情報量を自由に操作できるというのが普通のマインドマップとは違う進め方だ。

    Wikipediaのようなテキストベースの百科事典の場合、関連をたどる時に思考の流れが自然であることは良いのだが、全体を見渡しにくいこと、情報の追い方が線形になりがち、現在地を見失ってしまう、という欠点がある。その点、マインドマップは派生の結末から見ることも可能だ。ただ、異なるメインブランチとリンクするノードが増えてきた場合、カーソルが無数に交差してわかりにくくなる可能性がある。

    現在はメインブランチの精査と、確定したメインブランチからの派生を進めてみている。自分史のような時系列ではない表現もありがちだが、年齢というビューは時間に沿った考え方になってしまい、自由をかえって奪うのではないかと今は考えている。今後も、この試行錯誤はブログでも共有していく予定。

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    作者について

    青森県内でソフトウェア・システム開発を行うフリーランスのプログラマー。元々は集中監視システム開発に従事。現在はウェブサイト製作・オンラインシステムの開発案件を中心に、プログラミングのスキルトレーニングや講演も行う。

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